
アルカリ骨材反応って何?土木初心者でよくわからない。周囲になかなか聞けない。
こんな悩みに答えます。
- アルカリ骨材反応とは?
- アルカリ骨材反応の種類
- アルカリ骨材反応の事例
- アルカリ骨材反応の原因
- アルカリ骨材反応の予防対策
- アルカリ骨材反応の劣化対策
- この記事を書いてる人

この記事を書いてる私は、県土木職員5年経験した土木初心者。知識ゼロでもわかる初心者向けに土木情報を発信しています。
この記事を読めば、アルカリ骨材反応の初歩的な知識が身につきます。
アルカリ骨材反応とは?
アルカリ骨材反応(Alkali-Aggregate Reaction、AAR)は、コンクリートの強度や耐久性を低下させる可能性のある化学反応です。
この反応は、コンクリートの中のアルカリ成分(主に水酸化ナトリウムNaOHや水酸化カルシウムCa(OH)2)と、骨材(特にシリカ成分を含むもの)との間で化学反応が起こることによって発生します。
反応が進行すると、膨張やひび割れが生じ、最終的にコンクリート構造物の強度が低下し、耐久性が損なわれることがあります。
アルカリ骨材反応には、膨張反応、ひび割れ、鉄筋の腐食などが主な影響として現れます。
これらは特にコンクリート構造物において問題視されており、橋梁や道路、ダムなどの長期的な使用において注意が必要です。
アルカリ骨材反応の種類
アルカリ骨材反応にはいくつかの種類があり、反応する骨材の種類や条件によって異なる影響を与えます。
以下に主な種類を紹介します。
①アルカリシリカ反応 (ASR)

最も一般的なアルカリ骨材反応は、アルカリシリカ反応(Alkali-Silica Reaction, ASR)です。この反応は、コンクリート内のアルカリ成分と、骨材に含まれるシリカ(SiO2)とが反応してゲル状の水和物を形成し、膨張を引き起こします。
この膨張が進行すると、コンクリートの内部でひび割れや膨らみが生じ、構造物の耐久性に悪影響を与えることがあります。
ASRは特に、高アルカリ環境(アルカリ成分が高いセメント使用時など)で発生しやすいです。また、骨材のシリカ含有量やその種類、粒度によって反応の進行度が異なります。
②アルカリ炭酸塩反応
アルカリ炭酸塩反応は、骨材中の炭酸塩鉱物(主に石灰岩やドロマイト)とコンクリートのアルカリ成分が反応することで発生します。
この反応は、シリカを含まない骨材でも起こる可能性があり、シリカ反応とは異なる化学メカニズムで進行します。
アルカリ炭酸塩反応も膨張を引き起こし、コンクリートのひび割れを生じることがありますが、ASRに比べると発生頻度は低いです。

日本で発生するアルカリ骨材反応の多くは、アルカリシリカ反応 (ASR)です。なので、「アルカリ骨材反応=アルカリシリカ反応 (ASR)」という認識で覚えて問題ないかと思います。
アルカリ骨材反応の事例
アルカリ骨材反応の事例をいくつか紹介します。



アルカリ骨材反応の原因
アルカリ骨材反応が発生する主な原因は以下の通りです。
①高アルカリ環境
セメント中に含まれるアルカリ成分(ナトリウムNa2OやカリウムK2O)が高いと、反応が起こりやすくなります。高アルカリのコンクリートは、骨材との反応を促進します。
②高シリカ含有骨材
骨材に含まれるシリカ成分が高いほど、反応が進行しやすくなります。特に微細なシリカを多く含む骨材が反応を引き起こします。
③水分
コンクリート内に十分な水分があると、アルカリ骨材反応が進行しやすくなります。
アルカリ骨材反応の予防対策
アルカリ骨材反応を予防するためには、コンクリートの配合や使用する材料に工夫が必要です。
以下の方法で予防対策を講じることができます。
①無害骨材の使用
アルカリ骨材反応を防ぐ最も基本的な方法は、反応性のない無害な骨材を使用することです。
具体的には、シリカ含有量が低い骨材や、アルカリに反応しにくい成分を持つ骨材を選ぶことが推奨されます。
骨材の選定においては、反応性試験を行い、反応性の低い骨材を使用することが重要です。
②高炉セメント・フライアッシュセメントなど混合セメントの使用
アルカリ骨材反応を抑制するために、高炉セメントやフライアッシュセメントなどの混合セメントを使用することが有効です。
これらのセメントは、アルカリ成分の量を低く抑えることができ、反応を抑制します。
特にフライアッシュは、シリカ成分が高く、アルカリ骨材反応を抑える効果があります。
③コンクリートアルカリ総量の規制(Na2O換算 3.0kg/m3以下)
コンクリートのアルカリ成分を規制することで、アルカリ骨材反応のリスクを低減できます。
アルカリ成分の規制値として、Na2O換算で3.0kg/m3以下とすることが推奨されています。
これにより、アルカリ骨材反応を引き起こす可能性を減らすことができます。
アルカリ骨材反応の劣化対策
アルカリ骨材反応が発生した場合、早期に対処することが重要です。
劣化が進行すると、修復にかかるコストが増大します。劣化対策には以下の方法があります。
①表面塗装

表面塗装は、コンクリートのひび割れを防止し、アルカリ骨材反応による膨張を抑えるための一つの方法です。
専用の防水塗料やひび割れ防止塗料を塗布することで、外部の水分や酸素の侵入を防ぐことができます。
②ひび割れ注入

ひび割れが発生した場合、そのひび割れを補修するためにひび割れ注入を行う方法があります。
特に膨張が進行し、ひび割れが深刻になっている場合には、エポキシ樹脂などを使用してひび割れを補修し、コンクリートの耐久性を回復させることができます。
③断面修復

ひび割れや膨張が進行し、コンクリートの断面が削られてしまった場合には、断面修復を行います。
修復材料を用いて、削れた部分を元の形に戻し、コンクリートの構造的強度を回復させることが重要です。
適切な修復を行うことで、構造物の寿命を延ばすことができます。
まとめ
アルカリ骨材反応は、コンクリートの強度や耐久性に深刻な影響を与える可能性がありますが、適切な予防対策や劣化対策を講じることで、リスクを低減することができます。
無害骨材の使用や高炉セメントの導入、アルカリ成分の規制など、効果的な対策を取り入れることが、長期的なコンクリートの耐久性向上に繋がります。
コメント