この記事でわかること
– 重心とは何か:物体の重さが集中するとみなせる点の定義
– 単純形状・複合形状の重心座標の求め方
– 断面一次モーメントを使った土木構造計算への応用
重心とは何か:定義をシンプルに理解しよう
重心とは、物体に作用する重力の合力が通る点(= 重さが集中するとみなせる点)です。
均一な材料でできた形状では図形の幾何学的中心(図心)と重心が一致します。
構造計算では「どこを支点にすれば釣り合うか」を求める際に使います。
重心座標の求め方と計算公式

複合形状の重心座標は、各部分の面積 × その重心距離の和を全体面積で割ります。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| ȳ(ワイバー) | y 方向の重心座標 |
| Aᵢ | 各部分の面積 |
| yᵢ | 各部分の重心の y 座標 |
公式:ȳ = Σ(Aᵢ × yᵢ) ÷ ΣAᵢ
単純形状の重心位置(基準点からの距離)
| 形状 | 重心位置(y 方向) |
|---|---|
| 長方形 | 高さの 1/2 |
| 三角形 | 高さの 1/3(底辺から) |
| 半円 | 半径 r の 4r/3π ≒ 0.424r |
| 台形 | 底辺 a・上辺 b → h(2b+a)/[3(a+b)] |
具体的な計算例:T形断面の重心

フランジ(幅300×高50 mm)+ウェブ(幅100×高200 mm)のT形断面の重心位置を求めます。
| 部分 | 面積 Aᵢ | 重心位置 yᵢ(下端から) |
|---|---|---|
| フランジ | 300×50 = 15,000 mm² | 200 + 25 = 225 mm |
| ウェブ | 100×200 = 20,000 mm² | 200÷2 = 100 mm |
| 合計 | 35,000 mm² | — |
ȳ = (15,000 × 225 + 20,000 × 100) ÷ 35,000 = 5,375,000 ÷ 35,000 ≒ 154 mm
T形断面の重心は下端から約154 mm の位置です。
土木・建設現場での活用場面
重心・図心の計算は構造設計の根幹です。
- 断面二次モーメント計算:重心(図心)を通る軸周りの値が設計に使われる
- 梁の曲げ応力計算:中立軸(= 図心軸)から各点までの距離で応力を算出
- 擁壁・基礎の転倒計算:合力の作用点(重心)が底面の 1/3 以内に入るか確認
- 重機・資材の吊り作業:吊り点が重心の真上になければ傾く
特に土圧・水圧を受ける擁壁の安定計算では、各荷重の作用点(重心位置)を正確に求めることが設計の核心です。
まとめ:重心の基本チェックリスト
- ☐ 重心の定義「重力の合力が通る点」を説明できる
- ☐ 公式 ȳ = Σ(Aᵢyᵢ) ÷ ΣAᵢ で複合形状の重心を計算できる
- ☐ 長方形・三角形・半円の基本重心位置を覚えている
- ☐ T形・L形断面を分割して図心を計算する手順が分かる
- ☐ 擁壁の転倒計算に重心位置の概念が使われることを理解している
FAQ
Q1. 重心と図心の違いは?
均一な材料では同じ点になります。材料が不均一(密度が場所によって違う)場合は異なります。土木構造計算では多くの場合均一断面を扱うため、重心=図心として扱います。
Q2. 三角形の重心は頂点からどこ?
各頂点からの中線(メジアン)が交わる点が重心です。底辺から高さの 1/3 の位置になります。
Q3. 複合形状で「穴あき断面」の重心はどう求める?
「穴あき部分を負の面積」として計算します。ȳ = (A全体 × y全体 − A穴 × y穴) ÷ (A全体 − A穴) です。
Q4. 吊り作業で重心がずれているとどうなる?
吊り荷が傾きます。スリングの長さを調整して吊り点を重心直上に来るよう調整するのが現場対応です。
Q5. 断面一次モーメントとは何ですか?
S = Σ(Aᵢ × yᵢ) で表される量です。重心の公式の分子にあたる値で、「面積 × 距離の和」です。断面二次モーメントの計算に使います。

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