
標準貫入試験って何?機械ボーリングとどう違うの?土木初心者でよくわからない。周囲になかなか聞けない。
こんな悩みに答えます。
- 標準貫入試験とは?
- ボーリングとは?
- 標準貫入試験とボーリングの違い
- この記事を書いてる人

この記事を書いてる私は、県土木職員5年経験した土木初心者。知識ゼロでもわかる初心者向けに土木情報を発信しています。
本記事は、標準貫入試験とボーリングの違いについて解説します。
この記事を読めば、地質調査について専門的な会話ができるきっかけになるはずです。
【大前提】標準貫入試験とボーリングはセット
結論からいうと、
- 標準貫入試験:ハンマーで地盤を叩いて地盤の固さを知ること
- ボーリング:地盤調査のために穴を開けること
「穴開けて、ハンマーで叩いて・・・」と、ボーリングと標準貫入試験はセットで実施するものです。
それでは、それぞれ詳細に解説します。
標準貫入試験とは?

標準貫入試験とは、地盤調査の一環として行われる原位置試験の一つで、地盤の硬さや密度を評価するために用いられます。
この試験では、N値と呼ばれる指標を測定し、地層の判別や土の硬軟の判定に利用します。
試験の手順

- ボーリング機械を設置します
- ボーリングロッドの先端にサンプラーを取り付けます
- 63.5±0.5kgのハンマーを76±1cmの高さから自由落下させ、サンプラーを打撃します
- サンプラーが地盤に30cm貫入するのに必要な打撃回数を測定します
- このときの打撃回数がN値であり、地盤の特性評価に用いられます
N値と地盤の関係
N値は地盤の密度や硬さを示す指標であり、以下のように分類されます。
砂質土の場合
N値 | 硬さ |
---|---|
0~4 | 非常にゆるい |
4~10 | ゆるい |
10~30 | 中程度 |
30~50 | 硬い |
50~ | 非常に硬い |
粘性土の場合
N値 | 硬さ |
---|---|
0~2 | 非常にやわらかい |
2~4 | やわらかい |
4~8 | 中程度 |
8~15 | 硬い |
15~30 | 非常に硬い |
30~ | 固結した |
これらの分類により、地盤の支持力や沈下特性を評価し、構造物の設計や施工に役立てます。
また、良質な支持層と判断できるN値の目安は、砂質土で30以上、粘性土で20以上とされています。
標準貫入試験を実施することで、地盤の特性を詳細に把握し、安全で適切な構造物の設計・施工が可能となります。
ボーリングとは?

機械ボーリングは、地盤調査や地質調査のために、掘削機械を使用して地中に孔(ボーリング孔)を掘削する方法です。
主に土木・建築工事における地盤の性質を把握する目的で実施されます。
試験の手順
機械ボーリングは、掘削の進め方や採取する試料の種類によって異なりますが、一般的な流れは以下のようになります。
掘削機(ボーリングマシン)を調査地点に設置し、掘削を開始する。
ボーリングロッドを回転させながら掘削し、地盤の状況を確認する。
深度ごとに標準貫入試験を行い、N値を測定することで地盤の強度を評価する。
コア採取用のサンプラーを用いて、掘削した土や岩石の試料を採取する。
掘削孔を利用して地下水位の測定を行う。
調査完了後、掘削孔を適切に埋め戻し、安全を確保する。
ボーリングの種類
機械ボーリングには、掘削方法の違いにより 「オールコアボーリング」 と 「ノンコアボーリング」 の2種類があります。
オールコアボーリング

特徴
ボーリング孔の掘削と同時に、円柱状の試料(コア)を採取する方法。地盤や岩盤の詳細な性質を確認できるため、精密な地質調査に適している。
メリット
連続した試料が採取でき、地層の変化を詳細に把握可能。地盤の強度や構成を精密に評価できる。
デメリット
掘削速度が遅く、コストがかかる。
用途
ダムやトンネルなどの大規模土木工事の地盤調査。地滑り地の詳細な地質調査。
ノンコアボーリング
特徴
コアを採取せず、ボーリングを行う掘削方法。砂や粘土などの軟弱地盤の調査に適している。
メリット
掘削速度が速く、低コストで調査が可能。
デメリット
コアが採取できないため、地盤の詳細な情報が得られない。
用途
一般的な地盤調査や地耐力調査。住宅やビルの基礎設計のための調査。

ひと昔前は、標準貫入試験とノンコアボーリングがセットだったようですが、近年は、標準貫入試験とオールコアボーリングをセットで実施します。サンプリングの場合は、ノンコアボーリングとセットで実施します。
標準貫入試験(SPT)と機械ボーリングの違い
項目 | 標準貫入試験 | 機械ボーリング |
---|---|---|
目的 | 地盤の硬さ・密度の評価(N値測定) | 地質構造・地盤強度の把握、試料採取 |
試験方法 | 63.5kgのハンマーを76cm自由落下させ、サンプラーの貫入抵抗を測定 | ボーリングマシンを用いて掘削し、試料を採取 |
N値測定 | 可能(直接測定) | 可能(標準貫入試験を併用) |
試料採取 | 可能(乱された試料) | 可能(オールコアボーリングなら良質な試料を採取可能) |
適用地盤 | 砂質土・粘性土は可能だが、岩盤は基本NG | 砂質土・粘性土・岩盤など全般 |
掘削深さ | 数m~数十m程度(通常10~30m程度) | 数m~100m以上可能(用途による) |
試験の精度 | 中程度(局所的な地盤特性の把握向き) | 高い(連続した試料採取が可能) |
コスト | 低い | 高い |
主な用途 | 建築・土木の地盤調査(基礎設計) | 詳細な地質調査・地下水調査・岩盤調査 |
以上。
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